高専の現状


高専教育の現状について書かれています。
原文は以下のリンクを参照してください。

作成: 高橋邦広(段落・リスト修正、他原文のまま) 2006年8月30日更新


-引用元-
平成10・11年度 国専協・教育方法改善共同プロジェクト
「高専における数学教育の見直し」 数学談話会
アンケート回答原文 

岐阜高専 元電気情報工学科教員 北川惠一先生


数学と電気特に電気磁気学と電気回路についてのアンケートを求めておられるとのことです。当電気情報工学科の実状について、
  1. 電磁気学とベクトル解析については 当学科の稲葉が直接回答することになっています。
  2. 電気回路につきましては以下に回答します。
基本的には、電気回路を教えるために数学の教え方及びその進度など余り考慮していません。(当てにならない)
当科の電気回路は 2年から始めています。 このようなことを挙げれば、キリがありません。
電気工学を学習させるためには、電気回路知らずに次の教科へ進むことは困難です。

では、どのように対処しているか
電気回路の授業に必要なことは、時間中に数学の必要なところを教えて、その後 電気回路を教えています。従って、冒頭のような結論になります。決して、数学を無視しているわけではありませんが、学習の進度との関係で必然的にやらざるを得ないことになります。

一言 数学的な考え方は、数学の時間にキチンと聞くように指導してから、理学的な考え方と工学的な考え方を整理して、電気回路に必要な数学は一つの道具として、使いこなせるようにしています。

数学の先生の中には、数学のみを教え、工学を学ぶ学生であることを忘れている人がいる。このことについては長くなりますから省略します。

電気回路の勉強をするために、数学を一生懸命に勉強していたら時間が掛かりすぎると思います。数学の先生がもっと学生のレベル合わせて、教育効果を高める努力が不足していると私は思う。

以上 当電気情報工学科の電気回路に関する数学の対処方を述べました。これは応用数学においても同じことであります。



「電気磁気学とベクトル解析」についての雑感

岐阜工業高等専門学校 電気情報工学科 稲葉成基先生

「電気磁気学は片栗粉のようなものです。
何回も何回も混ぜているうちに、ある時、突然すっきりと透明になる。
一度や二度聞いただけで理解できるような学問ではないのです。
何度も繰り返し学習することによって、ある日、突然、霧がサーとはれたかのようにすっきりとするときがくるのです。
私はいつもこの話を学生にするのですが、すべての学生が最後にすっきりと理解するわけではありません。
問題なのは、すっきりしないからといって、学習することをあきらめてしまうことなのです。
すっきりしなくても、立派に電気系の技術者として活躍できるのです。」

二十年ほど前、東海地区の大学・高専で電気磁気学を教えている教官が集まり、電気磁気学の教授方法について検討した。
冒頭の文章は、名古屋大学の教授の興味深い発言の主旨である。
片栗粉を知らない世代の私にはピンとこない話であったが、電気磁気学の学問的な性格から何となくイメージすることはできた。

周知のように、大学の1単位の授業科目は45時間の学習を必要とする内容をもって構成されている。
講義は15時間の授業が実施され、残り30時間は、事前事後の教室外の学習によって補われる。
平たく言えば、一日3コマ(6時間)の講義があれば、家で12時間の勉強をしなくてはその科目を理解できないということである。
これは東京大学の学生でも、他のどこの大学でも、そしていつの時代でも同じことである。
大学進学率の低い時代ならいざ知らず、授業中に携帯電話が鳴り、あちこちで私語や居眠りが絶えないといわれる状況では、
教室外での学習を実践している学生はほとんどいないであろう。
それでも単位を修得して卒業していく。

高専の1単位は大学の講義時間の倍を必要としている。
それぞれ同じ内容だと仮定すれば半分の授業進行速度でじっくり教えることになる。
試験の回数も大学では学期末試験だけであるが、高専の場合は平均的には4回の試験があり、
それなりに試験勉強をする時間も期待できる。
高専生の方が大学生よりも電気磁気学をよく理解していたとしても決して不思議な話ではない。
高専の電気系の学生ではたして何人の学生が透明な片栗粉を体験して卒業して行くのか定かではないが、
ベクトル解析を最適なタイミングで入れ、手際よくまぜてやらない限り透明にはならないものと考えている。

BY takahashi@st.tutrp.tut.ac.jp