当該研究が本研究室の知識処理に関する研究の発端となるものであるが、 基本的には建築室内空間における地震時の避難シミュレーションを行なうことが その主目的であり、知識処理自体に重きを置いたものにはなっていない。
- 家具の転倒に関する知識ベース・シミュレート
PROLOG
家具の転倒判定
(床固定、壁固定、無固定)
室内の棄権度評価
(0、1型の評価ではなく、2次式によるメンバーシップ関数を用いている: ファジィ)
- 避難時の意志決定支援システム
PROLOG
個人知識を1次、2次目標に分類して整理
(2次目標は1次を達成するための予備知識)
状況認知にファジィを採用(5段階評価)
行動目標(火の気、弱者、出口等)は確定的評価関数
移動は時間依存で評価
個人知識の評価がキーこの2つが研究の骨格となる。パーソナルな知識をプレ処理で評価する システムとなれば、有用性は高まるように思われる。
1990年6月号の建築学会構造系論文報告集にその内容は掲載されており、 知識処理のテーマとしては最初の実質的な成果と言える。
平面トラスの安定・不安定をPROLOG及び、Fortranによる一般逆行列解析による 不安定モード導出によって、シミュレートしている。
- PROLOGによる記述は主に経験則から判断される見た目的な静的安定・ 不安定の基準を表現しており、更に利用者とのインターフェース部分 (含:グラフィック)もPROLOGによる。
- 構造物のブロック化、仮想部材の導入によって比較的複雑な構造物も 対処できる。
平面トラスを対象とするものではこれで完結しているもののヒンジによる安定・ 不安定判断は塑性崩壊モードの導出にも適用できると思われ、 異なった対象物へのアプローチも期待できる。
非同期的かつ並列的な避難の特徴をペトリネットにより モデル化。
- ペトリネットの説明:詳しく記述してあるものの、抽象的でわかりにくい。 基本的には情報伝播システムの一つであり、トランジションを 設けることによって、ノード間の流れを制御できるようになっている。 トークンの移動によってトランジションが発火し、 トークンを連結されたノードに出力し情報を伝える機構である。
- ペトリネット自体はトランジションの0・1的発火によって情報を 伝えるシステムであり、つながるか、つながらないかという部分で現象を シミュレートする点において、ニューロン発想に近い。
人間行動の心理的な部分は今回省かれているので、動きを規定するものが災害と 部屋配置のみになっている。また、シミュレーション例も1つだけで、 本システムの特徴を表現するにはやや弱い。結果的に色付きペトリネットモデルを 作成する手続きを述べたマニュアル的な論文となっている。
- フレームによる知識表現
FORTRANで書かれた構造解析プログラムをフレーム形式で表現し 整理できるシステムの作成。第2部として空間形態の知的データ表現を行なっている。
- FORTRANの構文・字句解析により、意味のあるつながりの検索を行なう。
- 結果的に変数、式などの意味はif−neededデモンの起動によって 利用者に問う形式になっている。 従って、マニュアル作成時の知識整理という意味で効果をもたらすものと判断できる。
- 上記のステップアップとして、システム自体が意味を推論するエンジンを 作成したい。それには知識を学習させることによって、判断させるか、あるいは 構造解析理論とのマッチングで行なうかの2種類がある。
- 空間形態認識
- 空間形態を境界表現(node→edge→face→(object,frame)→struct)し、 階層化する。
- 上記の知識表現を元にして、認識処理を行なう。特定形態の抽出を対象として、 以下の例題を説明。
a)外部・内部境界面の認識
b)耐震壁の対称配置の認識
c)大空間(無柱・壁空間)の認識
- 基本的に認識ルールを作成することで、エキスパート化されるものである。
- AI特にエキスパートシステムの沿革について
- スペースストラクチャーを企画・設計するフロー
- データベース、推論機構の基本概念の説明
- メンバーシップ関数を用いた重要度指標の算出と、 AHPに基づく重要度評価で空間構造物の代替案のデータベースから、 施主が要求するものをもっとも満たしているものを選別。 データベースの充実によってより有用性が上がる。
- ユーザインターフェースとして画面上に実際のデータ、 建物外観の写真も提示できる。
推論部分はProlog、 評価部分はFortranのプログラムで構成されている。 メンバーシップ関数の設定、AHPの一対比較値の設定の仕方に関する 言及がないのが論理性を乏しくしてしまう。